金魚

もし来世があるなら金魚にはなりたくないなあと思う デメリットが多すぎる 数年間狭い水槽の中で代わり映えのない景色を永遠に見続けて死ぬ時が来るのを待つしかないのはキツすぎる そう考えたらこの世の中で一番残酷な一生を送ってるのは金魚なんかもしれん 金魚は言葉を話せんし表情がない 金魚に犬猫のような愛らしい手足はない リスやハムスターのような毛も生えていない コミュニケーションが取れないものは何でも怖い 赤ちゃんも怖い 金魚も同じで何を考えているか分からない

 

しかしうちでは金魚を飼っている 赤色の金魚と黒色の出目金 昔行った祭りの金魚すくいで獲ってきた 金魚は本当に綺麗で、体が大きくなったせいで体の模様や色味こそ薄くなってしまってるけど、ひらひら動く尾びれとかあの大きくて黒い目玉に見られたら目が離せんくなる 金魚と名付けた人の気持ちがわかる気がする 人は弱いものを愛らしく思う 赤ちゃんもダンゴムシもマリモも弱い すぐ死ぬ すぐ死ぬもののことを愛しいと思ってしまう気がする 弱いから愛らしいから守ってあげたくなる でも多分金魚はそんなことを求めていない 生きようと思えば川でも生きられるのかもしれん でもそばに置いておくのは人間のエゴから始まったものなんかなと思う 自分がそうでなくても昔の人は多分そうだったのかもしれないし金魚を飼うという行為はそこから始まったのかもしれん 守ってあげなきゃいけないっていう過保護な心が金魚にとっては迷惑だったのかもしれん もっと大きな川で一生を終えたのかもしれん その川で自分より大きな魚に食べられたかもしれん それでも水槽の中での生活よりは幾分かマシなんかなあ うちの金魚たちは私たち人間のことを憎んでいるかもしれんし愛してるかもしれん 何も分からん 気持ちがわからん コミュニケーションが取れないのは怖い 今日2匹の金魚のために大きな水槽を買った 金魚たちには表情がない 喜んでるのかも分からない